前回は、1年単位の変形労働時間制について記載しました。
今回は導入にあたり、注意点を4つお知らせします。
①労働日数、時間に限度がある。
(1)連続して労働させる日数は6日以下、特定期間においては1週間に1日の休日が確保できる日数。(つまり特定期間においては最大で12日連続勤務が可能) (2)1日の所定労働時間を10時間以下、1週間の所定労働時間を52時間以下。
(3)対象期間が3ヶ月を超える場合には、対象期間における所定労働日数を1年当たり280日以下。
数式: 280日×対象期間の暦日数/365日(小数点以下切捨て)
例えば、対象期間が4月~9月の6ヶ月で暦日数183日とした場合には、限度日数は140日となります。
(4)対象期間が3ヶ月を超える場合は、所定労働時間が48日を超える週に気をつける
<1>所定労働時間が48時間を超える週が3週連続以下にしなければならない。
<2>対象期間を3ヶ月ごとに区分したときに、48時間を超える週を3回以下にしなければならない。
②変形期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を、必ず労使協定及び就業規則等に規定する。
③原則、勤務変更できない。
1年単位の変形労働時間制は、あらかじめ業務の繁閑を見込んで、それにあわせて労働時間を配分するものであるので、突発的なものを除き、恒常的な時間外労働は無いことを前提としています。
そのため、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することはないということを前提としています。
しかしながら、予期しない事情が発生し、やむを得ず休日の振替を行わなければならなくなることも想定されますので、事前に就業規則等に休日の振替ができる旨を規定しておくとよいでしょう。
④変形期間の途中で退職した従業員には、割増賃金を支払わなければならないことがある。
対象期間中に労働させた期間を平均し、1週間当たり40時間を超えて労働させたときは、その超えた時間であって通常の割増賃金の対象とならない部分について、別途割増賃金を支払わなければなりません。
数式:実労働時間-(通常の割増賃金対象時間+40時間×実労働期間日数/7日)
例えば、1日8時間、週6日勤務、4週間で退職した従業員については、
実労働時間=192時間(8時間×6日×4週間)
実労働期間日数=28日(4週間)
数式に当てはめると、
192時間-(0+40時間×28日/7日)=32時間 の割増賃金を支払うことになります。